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2018.09.28 fri

アラン島

著者:西出

アラン諸島、それはファッションとウィスキーをこよなく愛する人にとっては聖地のような存在で、私も死ぬまでに訪れてみたい場所の一つ。
司馬遼太郎さんの紀行文『街道をゆく』にも登場する、風光明媚で名所、旧跡が多いところでも有名ですね。
そんなアラン諸島、行ったことはなくともそこをルーツとするアイテムはよく見かけます。そう、フィッシャーマンニットです。
フィッシャーマンニットには別名があり、それこそがこのアラン諸島の名を冠したアランニットです。
漁師が着る、漁師の為のニットでして、油分を多く含む羊の毛を糸に紡ぎ、縄や命綱、一族繁栄を願ったモチーフを編み込みます。
そんな編地は家庭によりさまざまで、いろいろな願いごとや意味を込めて編み上げられていたといいます。その結果、運悪く海難事故で漁師が亡くなってしまった場合、 どの家族の者かを把握するにも一役買っていたとか。軍人がファッションではなく個体識別の為タトゥーを入れるのと同じ考えでしょうか、当時の生活の厳しさがうかがえるエピソードです。

そんなアランニット、今ではファッションとしての側面が強く、より軽く柔らかく、着やすくなって様々なブランドから提案されています。
メリノウールを始め、ラグジュアリーなタッチではカシミヤやキャメルを使用したものなどがありますが、しっかり水を弾くよう厳しい環境で育った羊の毛を使用し、 強度を持たせるべく強く編み込んでいる物は今では敬遠されるようになってしまっているのも事実・・・、とはいえそれこそが本物のアランニットということで、 弊店の姉妹店であるringでインバーアランを取り扱っていました。
羊本来の毛色をそのまま使用する為、ベージュからグレー、ブラウンといった三色〜四色くらいが生産可能になります。原毛を色ごとに選別したりと非常に手間のかかる手法で生産されているんですが、 一着編み上げるのに100時間近く時間を要するというのも私的には非常にロマンチックです。

雰囲気があって独特の温か味があって素晴らしいニットなんですが、着心地的には必ずしも良いというわけではなく、思う様には販売に繋がらなかったようで、今では 少しライトなシェットランドウールを使用したモデルのみを新規アイテムとしてラインナップしています。ちょっとさみしいですよね・・・悲。
マッキントッシュのゴム引きしかり、バブアーのオイルキャンバスしかり、タウンユースに適するように、保存と着用に手間とストレスのかかる素材は全てライトな風合いにモディファイされています。
時代に適応するというと聞こえはいいですが、本来の魂を失ってしまった・・・と考えるとそれはそれで何となく微妙。とはいえブランドを継続することが最も重要なことですので、 本来のイメージを極力変えないよう、ニーズに合わせて変化していくのが正しいことなんだと思います。上記のブランドたちは、今も衰えず大人気ですし、私もやっぱり変わらず大好きですし・・・。

そんな時代にファッションを販売する私は、せめて本物を知る努力をすべきですし、知った上で皆さんに今のムードをお伝えしないといけないんですよね。
ということで、今はこんな本を読んでいます。J.M.シング著、栩木 伸明訳の『アラン島』です。 訳者の栩木さんはアイルランド文学者ということもあり、歴史や時代背景を理解した上での翻訳となっていて、読みやすく、島の文化や生活の様子がよくわかります。 本当は現地に赴きたい所ではありますが、そうなると絶対に蒸留所ツアーになってしまうような気がします・・・。

ちなみに私、常飲するウィスキーはダブリンを本拠地とする、三回蒸留をポリシーとするジェムソン。保守的な私とは反対に、ジェムソン家の家訓は 「Sine Metu(シネ メトゥ=恐れ知らず)」とのことです。


本文とは関係ございませんが、今シーズン何故かハマってるニットベスト、購入記事はこちらです。

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