guji Monthly Journal #14 / 2022spring summer
"ライトアウター"って何を選べば良いの?という話
春の羽織りもの、毎年これに悩む・・・という方は多いと思います。
気温の変動が激しく、今日は初夏の陽気だったと思ったら明日は2型月下旬に逆戻り、風が強かったりじめっとしたにわか雨が降ったりと、安定しない日が続きますよね。
加えて冬にはできなかったイベントも盛り沢山。花見、バーベキュー、キャンプ、レジャーなど、外出する機会も増えると思います。
そんなときに一体何を着れば良いのか?
カジュアルテイストのテーラードジャケット・・・はちょっとお堅いし、もう少しカジュアルなもので今のトレンドが感じられて、着心地が良くて、でも大人にふさわしい上品さがあるアウターってないのかな・・・ということで、それらを満たすアイテムをいくつかご紹介致します。
オンの時はカチッと決め、オフのカジュアルは軽快でモダン、違いのわかるオーバーミドルはライトアウターの使い方が抜群に上手なんです。
絶対的なエース、春のM-65
イタリア本国でもカジュアルスタイルが多様化している今、「イタオヤのライトアウターといえば?」という問いに明確な答えはありません・・・が、高い支持率を誇るのはやっぱりタフで男の色気を漂わせるM-65タイプのフィールドジャケットです。
このM-65、イタリアでは年中着られているアイテムですが、実は季節によって微妙に素材や機能性がアレンジされているんです。
春夏は生地自体が薄手になり、秋冬は地厚になったり、中綿を入れたり取り外し可能なライニングがついたりします。
ここでご紹介するモデルは春夏ものなので、薄手でありケアも非常にイージー。
暑くなってくると畳んでバッグにしまうこともあると思いますので、シワが気にならずに着られる素材をチョイスしています。
コットンorナイロン
M-65の王道素材といえばこの二つ、コットンとナイロンですよね。
クラシックなムードを漂わせ、よりリアルなイメージを感じさせるコットン素材、そしてテクニカルな印象で程良くスポーティ、タフな印象に加えてギア的な軽快さを感じさせるナイロン。
どちらもそこまで季節感が強くないので秋も着られますし、トレンドの変化にも柔軟に対応可能。
ASPESI(アスペジ)は仕立てがよく、トータルバランスにも秀でているブランドなので安心感がありますよね。
デニム、チノ、カーゴ、ウールパンツなど、何にでも合わせていただけるので、ライトアウターの初手としてはまずM-65フィールドジャケットがお勧めです。
こちらも王道、トラッカージャケット
"ROBUSTOロブスト"や"PANATELAパナテラ"など、今の気分とイタリア的な美意識をミックスさせたシルエットのデニムで人気を博しているYCHAI(イカイ)、トップスもあればな・・・と考えられていた方も多いと思いますが、ようやく登場しました。
フロント左右のフラップポケットに、V字型の切り返しが入った通称"3rdモデル"。
トラッカージャケット王道デザインの一つをアレンジし、YCHAIらしくモダンでありながら長く着られる普遍性を持ったバランスに仕上げられています。
流行りすたりがなく癖もなく、着丈もショート過ぎずロング過ぎずというニュートラルなテイストだからこそ、何と合わせても上品に着られる汎用性があります。
上品にこなすならウールパンツを、アメリカンスタイルならチノで、何ならデニムパンツと合わせたセットアップも今なら許される空気になっていると思います。
ミラノ発のモダンシャツブランドBAGUTTA(バグッタ)、近年クリエーションの幅を大きく広げ、高い評価を集めています。
特に秀逸なのがシャツ生地を用いて仕立てられるブルゾン類でして、デザインは完全なアウター、でも生地はシャツ。
ということは・・・そうです、アウターの面構えのシャツということで、要するにライトアウターになるんですね。
このライトアウターコレクションがBAGUTTAの評価を著しく高めているというわけです。
こちらは上記のYCHAIと同じ3rdタイプのトラッカージャケットデザインですが、リネンのシャツ生地ということでもっと軽快で涼しげな印象に。
着心地的にはシャツですが見た目はアウターという感じで着られるモデルなので、腕まくりなんかをしてニュアンスを楽しんでいただくのも良いのでは・・・と思います。
バルスタータイプ、これも絶対に外せない定番です
今やクラシックなアウターブランドというイメージから脱却し、ダウンコートまで手掛けるトータルアウターブランド・・・の枠も超え、スポーツギアやインナー、パンツまで手掛けるスーパーブランドへと成長したHERNO(ヘルノ)。
そんなHERNOのライトアウター、これはちょっと意外に懐かしい感じかな・・・と思わせますが、そこはやっぱりトップブランドの矜恃ですね、使われている素材が超一流です。
LoroPianaロロピアーナ社のRAIN&WIND SYSTEM"T-WAY"はナチュラルルックスのファブリックに透湿防水フィルムをセットすることで、外からの水分は弾き、内からの湿気は逃すという機能を備えています。
急な雨も怖くないですし、中に湿気が籠ることなく快適に着られますので、まさに春のライトアウターとして適した素材ではないでしょうか。
もちろん秋も着られますし、シルエット的にもデザイン的にも飽きがこないバランスに仕上げられています。
フーディーブルゾン、ブランド毎にこだわりポイントが違います
上記の様なバルスタータイプがどちらかというと珍しく、HERNOのライトアウターといえばこちらを想像される方が多いのではないでしょうか。
テクニカルな素材を用いたジップアップタイプのヨットパーカ、毎年様々な素材が提案されていますが、今年はいつになく豊作で、セレクトするモデルを選ぶのに苦労した記憶があります。
gujiが選んだのはウルトラライトナイロン、そして撥水リネンを用いた2モデルです。
どちらも軽快でスポーティな印象ですが、HERNOらしいエレガンスとラグジュアリーさが備わった仕上がりになっていますので、大人の羽織りものとしてどこに行っても恥ずかしくないクオリティがあります。
ショーツと合わせてもバランス良く上品に着られますので、非常にスタイリングの幅が広いアイテムと言えますね。
ニットとのコンビネーションも近年HERNOが得意としているテクニックです。
アウターブランドがニットを取り扱うのは非常にハードルが高く、基本的にはほぼほぼ不可能になります。
ニットは特殊なので、ニットブランドがアウターを作ることはあってもアウターブランドがニットを作ることはほぼありません。
しかしそこに挑戦し、成功させてしまうのが今のHERNOのパワーです。
自社でニットを生産するラインを整備し、オリジナルのデザインを生み出すことに成功。
その完成度は年々高まっており、毎年登場するニューモデルがその時代最高の完成度を誇るというわけです。
体を動かすときにストレスがかからないよう可動部分にニットが当てられているデザインが多く、見た目的にもギア感が過ぎずにエレガント。
この分野ではHERNOがオンリーワンの地位を築いています。
イタリアのいちブランドから今では世界のトップブランドとなったSTONE ISLAND(ストーン アイランド)。
一朝一夕では実現できないテクニックが集約されたオリジナリティあふれるファブリック使いが特徴で、本格ミリタリーテイストとは一味違うイタリアらしい色気のあるタフさが魅力ですよね。
ストリートに通じる抜け感があり、子供っぽく見せない上質さとクオリティを備えたアウターとして、gujiでも凄く人気があるブランドです。
アジのある見え方はHERNOとは違ったニュアンスで、同じイタリアブランドではありますが志向するスタイルは全の別物。
よりカジュアルで、アクティブなスタイルに適しており、良い意味で大人のギャップを楽しんでいただけるアイテムだと思います。
コンパスパッチがアイコンになっており、一目でSTONEとわかる認識性の高さも魅力かと。
シャツをアウター感覚で羽織るという手もあります
コロニアルスタイルから派生したサファリシャツ、la favola(ラ ファ―ボラ)が手掛けるとこうなります。
サルトリアルなテクニックを駆使し、本格的なディティールによって構築されているシャツですが、羽織った時の雰囲気はエレガントであり、同時に抜け感も漂わせる不思議な仕上がりです。
なかなか他では見られない独特なタイプでして、かといってとっつきにくいというわけではなくサラリと着てしまえるところがミソ。
la favolaだからこそのセンス溢れる一着ですね。
コーディネート自体は非常にシンプル。
カットソーの上にシャツを羽織り、もちろんタックアウト。パンツはスリムでもワイドでも、つまり何でもあり。
シャツをアウター的に着るならシルエットはレギュラー、もしくはオーバーサイズというのが基本。
あくまでも羽織りものという目線なので、タイト過ぎず適度に空気を含んだ見え方、リラックス感があるものがベターですね。
生地のクオリティが高く、仕立てにもしっかりこだわられているものを選ぶことで休日のおじさん感が出ずに、スマートで上品、あわよくば知的な雰囲気さえ感じさせられるスタイルになります。
最後に
数年前は"テーラードジャケット"をベースにしたカジュアル、例えばシャツジャケットやニットジャケットといったアイテムがほとんどだったライトアウター事情。
コロナ禍において思いがけずに進化したスタイルなのかもしれません。
いつも自分らしくいられるようリラックスしたスタイルを中心に考え、そこに大人にふさわしい品格を求め、イタリアらしい色気も加味していく。
ライフスタイルが多様化している現代だからこそ、僕たちが愛しているイタリアンスタイルもグローバルに則したカジュアル化が進んでいるというわけです。
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