guji Monthly Journal #17 / 2022fall winter
今またダブルブレストが活気づいているという話
一時はバブルの象徴と囁かれたダブルブレストジャケット&スーツ。
あまりのインパクトの強さと時代のうねりに翻弄され、長く表舞台から姿を決してしまいました。
それから時が経ち2010年代前半、世代が変わり、シルエットやバランスが変わり、ダブルブレストは華々しく表舞台に戻ってきました。
時のトレンドと同じく、ナチュラルなショルダーライン、高めのゴージライン、シェイプの効いたウエストライン、タイトなシルエット。
イタリアンクラシコファクトリーブランドの隆盛とともに、多くのブランドが提案し、人気を博していました。
2020年前後に差し掛かると、トレンドの変化によってあまりにもイタリア色の強いアイテムは敬遠されることになります。
イタリアブランドが作るイタリアジャケットであったとしても、英国テイストを中心としたシックで落ち着いたアイテムが提案の中心へと変化。
そうなると、セールスは当然ながらシングル一極化へ。
が、そんなダブル冬の時代も2022年になってくると、変化の兆しが生まれています。
着こなしの変化、バランスの変化
まず、ダブルブレストはボタンを留めることでグッとウエストがシェイプされ、胸元に立体感とボリュームを表現するスタイルが普通でした。
ボタンを留めずにダブルを着るなんて、前がガバガバするしだらしなく見えるよね・・・と。
ところがイタリアの色気を全面に押し出すスタイルが落ち着きを見せると、まずウエストシェイプを抑え、抜け感が表現できるボタンを留めない着こなしが市民権を得始めます。
スナップでよく見かける多くのファッショニスタも、ほぼ全員ボタンは開けている状態に。
それから、シングルジャケットのトレンドと同じくゴージラインが少しずつ下がり、伴ってウエスト位置も変化。
6ボタンが当たり前だったところ、より重心が下げられる4ボタンも見られるように。
従来のダブルを知らない20代の若い方から新鮮さをもって受け入れられ、その後バブルを経験したオーバーミドルの方までトレンドが波及、今では新しいバランスのダブルが大きなムーブメントとなりました。
前置きが長くなりましたがそんな新しいダブル、gujiではほぼ全ての重衣料ブランドでオーダーしていますし、いくつかのブランドには別注もお願いしています。
今回は現時点で入荷しているアイテムの中から、いくつかピックアップしておすすめしたいと思います。
いきなりの本命、TAGLIATOREのWESTON
gujiの重衣料ブランドの基幹であるTAGLIATORE(タリアトーレ)で登場した4ボタンモデルの"WESTONウェストン"。
人気モデルであるMONTECARLOモンテカルロやDAKARダカールのバランスを踏襲しつつ、スッキリと、さっぱりと着られるダブルブレストが提案されています。
あくまでも仕立ては軽く、TAGLIATOREらしい色気は健在。
カーディガンの様に着られるのに、新しいダブルならではの存在感があります。
ウエストはシェイプされていますが、グッと絞られているというほどでもありません。
4ボタンなのでVゾーンが深く、前を開けて着てもすっきりとした見え方になっていますよね。
この辺りのバランス構築がTAGLIATOREは本当に上手いです。
新しいダブルブレストをお探しの方は、まずこちらをご覧いただければと思います。
カリッとした見え方、De PetrilloのSomma
De Petrillo(デ ペトリロ)の4ボタンダブルブレスト"Sommaソンマ"は半毛芯、つまり肩から胸元まで毛芯を配したハーフキャンバス仕立てが採用されています。
カチッとした仕立てながら古くならず、新しいバランスが感じられるのはDe Petrilloのモデリングの上手さでしょうか。
ウエスト位置が低いわけではなく、伴ってVゾーンも狭めという一見従来バランスのダブルかと思ってしまいますが、羽織ると実にモダンに見えます。
この辺りが6ボタンではなく4ボタンの特徴ですね。やや重心が下がって見えますので、今求められるバランスに仕上がります。
シャープなシルエットだからこそ、ボタンを外した時の開きがスッキリ見えます。
また着丈長さも絶妙で、ウエストラインとの関係性が素晴らしいんです。
ジャケットの着丈の長さもコンパクトなものから少しずつ長めのものへとシフトしている中で、多くの方に受け入れていただける"ここしかない"という設定ですね。
ビジネススタイルに一石を投じる完全別注モデル
RING JACKET(リングヂャケット)とのコラボレーションから新しく生まれた"GUJ-03E"モデルダブルブレストは、やりすぎず控えめすぎず、gujiが考えるビジネススタイルの新提案として練りに練られたモデルです。
長くご好評をいただいているシングルジャケットGUJ-01をベースにラペルやウエスト位置、全体のバランスを整えて作り上げた自信作。
何度もサンプル修正して微調整を繰り返し、細部まで突き詰めることで完成度を高めています。
カジュアルシーンでは4ボタンがトレンドですが、ビジネスシーンではまだファッション感を強く感じさせてしまうことから6ボタンをチョイス。
またゴージラインも下げず、ウエストシェイプも緩めず程良くフィットするラインを採用。
ビジネススタイルではシルエットのゆとりの表現が実に繊細です。
クラシックのルールはカジュアルよりも明確であり、踏襲すべきポイントが多くありますので、そこを外さずにgujiらしさとトレンド変化に対応できる柔軟性を考慮してバランス調整しました。
過度にファッション的に見えず、それでいていつ見ても新鮮で新しい、これが"GUJ-03E"モデルです。
気が早いですがコートについても少し・・・
冒頭と同じくの人気ブランドTAGLIATOREでは、チェスターコートもダブルブレストで別注しています。
以前から展開しているシングルタイプの別注が多くの方にご支持いただいており、ダブルもいつかは・・・と考えていましたが、guji全体としてダブルをお勧めしていくというベストなタイミングが訪れたので新しく制作を依頼しました。
こちらも手前味噌ですが、よくできた仕上がりになっていると思います。
ショルダーライン、袖付けや振り方、前後見頃のバランスなどはシングルをベースに製作し、フロントの打ち合わせの深さやラペル幅、ラペルの角度、ゴージ位置などを指定。
この辺り感覚的なところもあり、正確に目指す雰囲気を伝えるのが難しいんですが、うまく汲み取っていただき完成させることができました。
それでもやはり修正回数は増えてしまいます。
TAGLIATOREとはお付き合いも長く、別注も何度かお願いしている関係ですが、それでも微妙なニュアンスを反映しつつ製品化するのは難しいですね。
とはいえgujiのこだわりは全て詰め込むことができたと自負していますので、是非お試しを・・・と思います。
特に直線的なラペルのラインが気に入っています。
最後に
ダブルブレストは着る人を選ぶ、そんな時代もあったと思います。
それは今も全てが変わったわけではなく、あくまでもシーンの中心はシングルです。
以前ダブルがトレンドだった時も同じ様なことを言っていた気がしますが、選択肢が増え、スタイリングが多様化することでシーンは盛り上がります。
ダブルの人気が高まるタイミングはファッションのみならず経済も盛り上がる、そんな印象もあるような気がします。
ということで新しいダブルが気になる、でも選ぶ基準がよくわからない・・・という場合は是非スタッフにご相談頂ければと思います。
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