
こんにちは。 gujiの煌Kです。
今までの「煌K手帖」は如何でしたでしょうか。
この端境期と言われるシーズンはどうしようかと思っていましたが、物を伝えるのにそんなことは関係ないですよね。
変わらず、個人的にも気になりしっかりお伝えしたい、沢山あるブランド群の中で埋もれているのでは、と思うブランドを書いて行きたいと思います。
第11回目は、ringで展開のFumiya Hirano THE TROUSERS(フミヤヒラノ トラウザーズ)。
展開前から大手セレクトショップが展開していたので知ってはいましたが、改めて良いブランドだと感じました。
ringはイタリア、アメリカ、フランスなどのトラッドをモダンに解釈した提案を続けていますが、特にイギリスブランドにはだいぶお世話になっています。
皆さんご存知の、Mackintosh、BARACUTA、Crockett&JONES、Clarks、INVERALLANなどなどringだけでなくブリティシュトラッドを謳う際には必ず出てくるブランドです。
名だたるブランド達を如何にモダンに解釈出来るか。
また、僕達が解釈するそれに該当するブランドはないかと模索していた際にこのブランドに出会いました。
以前から日本のマーケットにブリティッシュを感じるブランドが少ないと平野 史也氏は感じており、またそれをドレスだけでは無くカジュアルにも着用出来る物は更に少ないと思い、ある人物を介して日本でブランドを立ち上げたそうです。
デザイナーの平野 史也氏は、国内のテーラーで6年間の修行後、2012年に渡英。
へンリー・プールでカッターとして修行した後、2015年にロンドンで独立を果たします。
氏はサヴィル・ロウの影響を強く受け、製作のベースはそこにありますが、英国そのままを表現するのが氏の強みではありません。
英国でも腕利きと評判はあったものの、日本人特有の感度を融合させ、イギリステイストに新たなスパイスを入れています。
英国ならではのカッティングと日本ならではの繊細な縫製。
特にボタンホールやラペルのステッチなど、細かな箇所を丁寧に縫い上げることで、イギリス製の物と違って見せていきます。
また、ジャケットやパンツのウエストバンドの芯地やイギリスではかなり厚く固めを採用することが多いですが、高温多湿の日本ではそれを薄くハリのある物に変更。
細かな部分をより国内で快適に過ごせるように変更することで、それが新たなデザインにも繋がっています。
英国での洋服の知識はイタリアの解釈とは違い、ジャケットですと高いウエスト位置でのドロップや裾に流れるようなドレープなどイギリスならではの考え方があります。
固さのイメージがあるイギリス製ですが、同ブランドの物は日本人体形に合わせた上りの吸い付きや背中のホールド感、フロントカットに若干丸みをもたせるなど氏の日本人に合わせた技術が存分に盛り込まれています。
また、前身頃と後身頃のバランスを調整することで、日本人のように前肩で胸板が薄い体型にも馴染むよう工夫しているのも大きな特徴です。
昨今、価格の高騰もありイギリス生地での展開が厳しくなってきました。
とは言え、イギリスの空気を感じる生地を展開したい思いは変わらず、氏自ら世界でも有名な生地の産地である尾州へ。
そこで作る生地から氏が厳選しセレクトを行い、コレクションの中に入れて提案しております。
サキソニーの様でフランネルに近い生地や、ヘリンボーン織の生地などイギリスらしさを感じながらも、日本のタウンユースに採用しやすい生地たちが並びます。
ringでは、それぞれのモデルに合わせたその日本生地のセレクトを行っています。
営業の方がFumiya Hirano THE TROUSERSのファーストサンプルを穿いた際の感動は忘れられないと言うぐらい、イタリア慣れした僕達には穿き心地やディティールがとても新鮮に感じました。
また、ブリティッシュテーラーのサイズピッチやイギリスにしかないルールが存在し、それらを踏襲し今のスタイルに落とし込んだデザインは想像以上の仕上がりでした。
僕達がこのブランドを好きな理由は、イギリスのドレスを謳うだけの提案ではなく、新しい立ち位置を提案していることです。
ringとしては、こういったモノづくりに真摯に向き合い、"新しいあり方"を作って行こうとするブランドの展開の幅を広げて行きたいと思っております。
早速スタイリングを組んでみました。
ジャケットはブリティッシュのディティールを踏襲し、イタリアとは違ったシルエットのFumiya Hirano THE TROUSERSのシングルジャケット。
インナーはこちらもイギリスのニット界の定番JOHN SMEDLEYのニットポロ。
靴はこちらもイギリスのCrockett&JONESのLICHFIELD2。
パンツはFumiya Hirano THE TROUSERSでモデルはストレート気味のシルエットで少し緩めなMADDOX。
ほぼすべてイギリスブランドで固めたスタイルですが、皆さんが思っているような固さは無いかと思います。
昨今は、フレンチスタイルと言われる少しゆとりがあり、そのゆとりがドレープとして美しく見えるスタイルが主流になってきています。
また色はシックに纏めた合わせですが、素材感を感じるスタイルではないでしょうか。
こういったイギリスブランド達をイギリスらしく着こなすことも一つのスタイルですが、今だからこそ違った空気感で着用するのも良いのではと思います。
そういった着合わせは、氏がデザインを作る段階からそれを考え、日本で製作しているFumiya Hirano THE TROUSERSだからこそ出来るのでしょう。
ファッションはその時その時で自分のマインドの変化があります。
全く同じ物やスタイルでも、自分の心持ちで全く違ったように見えてきます。
ですので、“今の気分”と言うのはとても大切に感じます。
ミーハーな僕の最近のマインドは、少しトラッドに寄っているのかもしれません。
ringらしくも、如何に自分のマインドに合わせたコーディネートが組めるか。
また、Fumiya Hirano THE TROUSERSらしさを考えながら。
この追求は、ファッションを楽しむマインドの変化がある限りは終わりは無いんだと思っています。
今後このブランドがどうなっていくかは、僕達含め扱っているセレクトショップがどのような解釈で表現して行くのかで大きく左右されるかと思います。
イギリスの伝統を引き継ぎ継承していると同時に、新しいイギリス物の在り方を追求しているFumiya Hirano THE TROUSERS。
こんな素敵なブランドをどう活かしていくか小売り側も真剣に考え、お客様にその素晴らしさを地道に伝えて行くべきだと思っています。